OPECプラスは減産幅を4月から縮小する(写真:ロイター/アフロ)

原油価格が約2年ぶりの安値水準となっている。OPECプラス内の規律が乱れ増産圧力が高まっているほか、トランプ関税の発動により米国内のガソリン価格が高騰し需要が減少すると見込まれている。そして地政学リスクの低下で原油価格を下支えする材料がなくなりつつあることも大きな要因だ。

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り、1バレル=65〜70ドルの間で推移している。レンジの下限が先週と比べて3ドル低下している。市場の需給緩和が嫌気され、原油価格は一時、65.22ドルと約2年ぶりの安値を付けた。

 まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。

 石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの大産油国が構成するOPECプラスは3月3日「有志国が実施している日量220万バレルの自主減産を予定通り4月から段階的に縮小する」と発表した。4月から生産を日量13.8万バレル増加し、2026年までに同220万バレルの供給を増やす見通しだ。

 原油価格が軟調に推移していることから、自主減産の縮小は「再び先送りされる」との観測が出ていたが、OPECプラスは4度目の延期を回避した形だ。

「サウジアラビアがトランプ米大統領の増産要請に応じた」との解説が出ている中、ロイターは4日「(OPECプラスの増産決定を)カザフスタンの原油生産量が記録的水準になっていることが後押しした」と報じた。

 カザフスタンは米石油大手シェブロンがテンギス油田の大規模な拡張作業を終了させたことで2月の原油生産量は前月比13%増の日量212万バレルに達しており、OPECプラスが定めた目標枠(同147万バレル)を大きく上回っている。

 カザフスタンの増産について、サウジアラビアを含めた数カ国のOPEC加盟国は憤っており、「このような状況下では生産枠を遵守することは意味がない」との声が高まっていることを受けて、やむなく増産に舵を切ったというわけだ。

 各加盟国の生産枠遵守率はこの1年で悪化しており、OPECプラス内の規律がさらに緩めば、原油価格の下押し圧力になることは間違いない。

 米国に目を向けると、「米国の原油生産量を増やす」とするトランプ氏の号令は空回りしている。