トランプ・ゼレンスキー会談決裂も停戦への期待は維持
米国とウクライナの首脳会談は決裂したものの、「ロシアとウクライナが停戦に向かい、米国の対ロシア制裁が解除される」との期待は維持されている。
米ロの接近でイランを巡る緊張状態が緩和される可能性も生まれている。
ブルームバーグは4日「トランプ政権が対立するイランと核問題などの交渉実現のため、ロシアに仲介支援を求めた」と報じた。ロシア大統領府のペスコフ報道官も5日「今後のロシアと米国の協議でイランの核開発計画も議題になる」と認めた。
イランでは2日、経済失策を理由にヘンマティ経済財務相が罷免(ひめん)されるなど政局が流動化しており、対米強硬路線を固持する余裕はないのが実情だろう。
原油市場の余剰感が増す一方、地政学リスクの下支え効果は薄まれば、原油価格が1バレル=65ドル割れするのは時間の問題だ。
そして、原油価格の維持に努めてきたサウジアラビアの財政赤字は膨らむばかりだ。
原油価格の不調で昨年の財政赤字は308億ドル(約4兆6000億円)に上った。歳入の要である国営石油企業サウジアラムコの今年の配当総額も前年比30%減の854億ドル(約1兆3000億円)にとどまる見通しだ。
日本の原油輸入の4割以上を占めるサウジアラビアの今後の動向も引き続き注視する必要がある。
藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。