
3月4日、米国のトランプ大統領はメキシコとカナダに対して25%の輸入関税を発動させると発表した。中国からの輸入品についても、既存の追加関税に、さらに10%の関税を上乗せする。今の円安に関しても批判を述べたため、株式市場は総崩れ状態だが、果たして円相場にどのような影響を与えるのだろうか。(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)
政治的発言でさらに積み上がる投機の円買い
3月4日、トランプ米大統領はメキシコとカナダに対して、25%の輸入関税を4日に発動するという考えを改めて示した。中国からの輸入品については、既存の追加関税(10%)に加えてさらに10%を課すことも表明していたが、これも4日に発動される。
実体経済への影響は今後試算が進むだろうが、短期的にはインフレ誘発的、長期的にはデフレ誘発的な政策と考えるべきだろう。
注目は為替市場の反応である。トランプ大統領は関税を引き上げる理由を説明する際、中国とともに日本が通貨安を誘導してきたと批判した。
具体的には、トランプ大統領はホワイトハウスで記者団に対し、「日本の円であれ中国の人民元であれ、彼らが通貨を下げると我々に非常に不公平な不利益をもたらす」と述べ、追加関税によって「迅速かつ効率的に公平性をもたらす」という趣旨を強調している。
ちなみに、「中国の習近平国家主席や日本の首脳たちに電話して『通貨を切り下げ続けることはできない』と伝えてきた」とも述べているが、これが第二次政権発足後の話なのか、それとも第一次政権時代の話なのかは不明だ。
これらの発言を受けて、ドル/円相場は再び150円割れまで急落しているが、これはかなり危うい動きと言わざるを得ない。