世界規模の景気後退「トランプセッション」は避けられない?(写真:ロイター/アフロ)
トランプ関税によって貿易戦争が勃発し、世界規模の景気後退が起きるとの懸念が出始めている。通称「トランプセッション」だ。これにより米WTI原油先物価格は60ドル割れする可能性が高まってきた。
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り、1バレル=65ドルから68ドルの間で推移している。レンジの上限が先週と比べ2ドル低下している。需要への懸念から上値が重い展開となっている。
まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。
ロイターによれば、石油輸出国機構(OPEC)の2月の原油生産量は前月比17万バレル増の日量2674万バレルだった。
最も増えたのはイランで、前月比8万バレル増の日量330万バレルだった。米国の制裁強化にもかかわらず、イランの原油輸出は堅調さを維持している。マレーシア沖合での積み替えなど制裁回避の試みが功を奏し、中国への輸出(全輸出の9割を占める)はこれまでのところ支障をきたしていない。
トランプ政権はこの事態を見逃すわけにはいかず、大量破壊兵器の拡散防止を目的とした国際協定に基づき、イラン産原油を輸送するタンカーを海上で検査する計画を検討している。マラッカ海峡など海上交通の要所を航行する船舶を米国やその同盟国が検査することになれば、取引に関与する組織は打撃を被り、イランからの原油輸出が減少することは確実だろう。
トランプ政権はイランに対して核問題に関する協議も呼びかけている。
これに対し、イランの最高指導者ハメネイ師は8日「『いじめ国家』の要求には応じない」と述べ、交渉を拒否する方針を示している。だが、ロシアが仲介を申し出ており、今後、両国の間の緊張が緩和に向かう展開もあり得る。
イランとは対照的に、トランプ政権はロシアへの融和路線を鮮明にしつつある。