世界経済は今、トランプ政権の関税政策や各国の対立激化により、先行きの見通しが一段と難しくなっています。トランプ関税の本質はどこにあり、2026年日本企業は何に備えるべきなのか。経済産業省でFTA交渉などを担当し、現在は経営戦略支援を手がけるオウルズコンサルティンググループの羽生田慶介CEOに話を聞きました。4回に分けてお届けします。
(取材日:2025年11月27日)
※JBpressのYouTube番組「JBpressナナメから聞く」でのインタビュー内容の一部を書き起こしたものです。詳細な前編は、JBpress公式YouTubeでご覧ください。
トランプ関税は終わらない
——トランプ関税は「15%」で決着しましたが、どう見ていますか。
羽生田慶介・オウルズコンサルティンググループCEO(以下、敬称略):企業からすると、15%でも十分に高く、素直に喜べる状況ではありません。25%から下がるまでの交渉団の苦労には感謝ですが、いずれにせよ負担は重い。「めでたしめでたし」で終わる話ではありません。
トランプ大統領は関税を交渉ツールとして考えているのだと思われていましたが、最近では税収自体を目的にしているようにも見えます。一般的に先進国の関税収入など微々たるものですが、トランプ氏からすると確実に入る財源として魅力的に映っているようです。
本来、関税は輸入企業、つまり米国に所在する企業が負担する制度なのですが、トランプ氏は外国側が払っていると説明しています。確かに価格に転嫁しない限り海外企業が負担(輸出価格を下げて出荷)する面はありますが、足元ではいよいよアメリカ国内の物価に転嫁され始めており、物価高を通じて支持率に響き始めている状況です。
そこで今後、トランプ氏は「皆さんの負担を軽くするために関税を下げます」「関税で得た財源を配ります」といった動きを見せる可能性があります。つまり、関税は上がることも下がることもあり得ます。
国ごとの税率として日本はいったん「15%」に収まりましたが、トランプ氏にとって関税は「無限に切れるカード」です。今後、自動車には…鉄鋼には…銅には…アルミには…半導体には…衣料品には…というように、分野ごとに細かく追加関税を発動してくる可能性もあります。