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日銀は12月19日に開いた金融政策決定会合で政策金利を0.25%引き上げて0.75%としました。政策金利は1995年以来、約30年ぶりの高い水準となりますが、市場は円高ではなく円安方向に動きました。2025年の金融市場を振り返りながら、2026年の日米経済のリスクを分析します。みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏と、みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部チーフグローバルエコノミストの河田皓史氏に、JBpress編集長の細田孝宏が聞きました。3回に分けてお届けします。

(収録日2025年12月22日)

※JBpressのYouTube番組「JBpressナナメから聞く」でのインタビュー内容の一部を書き起こしたものです。詳細な前編は、JBpress公式YouTubeでご覧ください。

日銀が0.75%に利上げ、インフレに対して「慎重すぎ」

——日銀は12月19日に開いた金融政策決定会合で政策金利を0.75%へと利上げしました。今回の利上げについて、どう見ていますか。

唐鎌大輔・みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト(以下、敬称略):0.75%への利上げ自体は4月に実施されるはずだったものですが、4月2日の相互関税ショックにより見送られ、結果として12月になったという経緯があります。既定路線の利上げが遅れて実施されたという印象です。

 ただ、CPI(消費者物価指数)の上昇率がヘッドラインで3%の日本で、政策金利が0.75%というのは十分ではなく、実質金利は極めて低い。その点が公表文にも明記され、それを材料に円売りが進んだというのが現時点での整理だと思います。

 確かに公表文の表現や植田総裁の発信を理由に円安が進んだという見方もありますが、そもそも誰の後始末としてこの利上げが行われているのか、という視点も持って欲しいと思います。リフレ思想の強い政権下で使えるカードが限られる中、ほふく前進ながらも正常化を進めている点は前向きに評価されるべきだと思います。

——日銀出身の河田さんはどう見ていますか。

河田皓史・みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部チーフグローバルエコノミスト(以下、敬称略):リフレ志向の政権下でも金融政策正常化を一歩進めた意義は大きいと思いますが、3%前後のインフレが続く国で、金利が0.75%までしか上がっていないというのは、やはり慎重すぎる印象はあります。

 もっとも、日銀がそうせざるを得なかった事情も理解できます。過去に正常化を始めた途端、外部環境が悪化し「日銀がまた失敗した」と批判された経験が、組織的なトラウマとして残っているのでしょう。インフレも円安による一時的なものではないかという慎重論があったのも事実です。とはいえ、インフレに対して利上げが遅れている状況に変わりはありません。