世界は「ドル安の年」、日本は「円安」

——2025年の金融市場を振り返ると、どういう一年だったのでしょうか。

唐鎌:為替の観点から言えば、2025年は歴史的な「ドル安の年」でした。4月以降、世界的にドル離れが進み、ユーロやスイスフランといった欧州通貨が買われました。多くの通貨が対ドルで上昇する中、例外的に軟調だった主要通貨が「円」でした。

 つまり「ドル安の中で円安が進んだ」という稀な構図です。通常は円安ドル高のとき、ユーロも対ドルで下落しますが、今年は「ドル円」相場も「ユーロドル」相場も上昇しました。結果として「ユーロ円」は180円台に定着。日本円の価値が対ドル以外でも大きく劣化した1年だったと言えます。

 今後これが新常態になるなら、為替市場を予想するのはこれまで以上に難しくなります。ドル円だけを見るのではなく、通貨全体の指数を見る癖をつけないと何が起きているのか分からなくなるでしょう。名目金利差とドル円だけに着目する分析は、かねてより問題があるものでしたが、今年はそれがさらに明確になった1年でした。

日銀の植田総裁(写真:ロイター/アフロ)

河田:マクロ経済で見ると、2025年は「悲観から楽観へのジェットコースター」のような年でした。

 1月にトランプ政権が発足し、4月2日の相互関税で一気に悲観が広がりました。多くのエコノミストが世界経済見通しを下方修正しました。しかしその後、米中のジュネーブ合意などが進み、「思ったほど悪くない」という見方に戻ってきました。

 さらに後半は「AIブーム」がすべてを覆い隠しました。世界経済成長率の見通しも一時は2%台後半に引き下げられましたが、最終的には3%を大きく上回る着地になりそうです。関税というネガティブ要因を、最終的にAIブームが打ち消した年となりました。