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高市政権が掲げる財政拡張路線のもと、債券・為替市場は不安定さを増しています。多くの国民が円安と物価高に苦しむ中、日銀や政府はどう動くのか。2025年の金融市場を振り返りつつ、2026年の日米経済の動向について、みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏と、みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部チーフグローバルエコノミストの河田皓史氏に、JBpress編集長の細田孝宏が聞きました。3回に分けてお届けします。

(収録日2025年12月22日)

※JBpressのYouTube番組「JBpressナナメから聞く」でのインタビュー内容の一部を書き起こしたものです。詳細な前編は、JBpress公式YouTubeでご覧ください。

高市政権は情報の交通整理が必要

——財政拡張路線の高市政権が発足してから2カ月が過ぎましたが、現状をどう評価していますか。

唐鎌大輔・みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト(以下、敬称略):拡張的な財政・金融政策をどう評価するかという話だと、マーケットは「あまり良くない」と見ています。

 リフレ政策を支持する論者たちからは「マーケットの反応が間違っている。教科書的には正しい」と言った趣旨の主張が散見されます。しかし、実際に資金を出しリスクを取っている市場参加者が疑念を持っている以上、残念ながら政策として成功しているとは言いにくいでしょう。理論や教科書に忠実であることは大事ですが、その意思がマーケットに通じていない現実は真摯に受け止めて欲しいと思います。

 高市政権の財政・金融政策に関しては、情報発信の交通整理が必要だと感じています。

 10月の総裁選以降、債券、為替、株式市場が荒れるなか、例えば円安について財務大臣が「憂慮している」と発言する一方で、政府に近いと目されるエコノミストたちが様々なメディアを通じてかわるがわる拡張的な財政・金融政策の有効性を主張しています。そして、メディアによってはそれが英語に翻訳され、海外に「政府の声」かのように配信されていきます。

 為替市場は直情的なので、こうした材料の真偽を吟味せずに取引に使ってしまいます。

 通貨政策は財務省の所管です。ひとまずは財務大臣からの情報発信に「ワンボイス化」を図り、マーケットを落ち着かせることが必要だと思います。日銀も、0.25%ポイント刻みの利上げをあと何回できるかわかりません。限られたカードで円安を是正しようとする中で、「円安でいい」、「金利は上げなくていい」、「拡張財政で問題ない」という発言が政府周辺から出てくるのは、日銀が気の毒だと思います。今は、情報をあちこちから出さない方がいい局面だと思います。

河田皓史・みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部チーフグローバルエコノミスト(以下、敬称略):高市首相も日銀も、企業も家計も、これ以上の円安は望んでいません。にもかかわらず、必ずしも責任を負わない立場の人の発言が、円安を招いてしまう状況は好ましくありませんし、日銀の政策運営にも影響します。