名目と実質の乖離、日銀は何を目標にするのか
——2025年の日本の景気の状況を振り返りますか。
唐鎌:日本経済に目を向けると、名目と実質の乖離が極めてはっきりしています。雇用者報酬も個人消費も、名目では伸びていますが、実質ではほとんど伸びていません。株は高い、通貨は安い(外貨は高い)、不動産は高い——これらはすべてインフレで説明でき、普通の人にとっては、かなり厳しい経済状況だと思います。
河田:日銀の目標は物価安定、つまり2%インフレです。実質賃金が伸びていなくても、物価と賃金が名目で上がり、物価が2%で安定していれば、政策目標は達成ということになります。
しかし、それが国民にとってハッピーかと言えば、必ずしもそうではありません。FRB(米連邦準備制度理事会)のように「雇用の最大化」をマンデート(役割)に含めるべきか、実質賃金や名目GDPをターゲットにすべきかといった議論を改めてする時かもしれません。2013年の政府・日銀アコード(共同声明)から10年以上が経ち、「日銀は何を目標に、誰のために政策を運営するのか」という問いが、より重くなってきていると感じます。