名目GDPで600兆円超えも実質GDPはゼロ成長
では、何を見るべきなのか。やはりこの3年間で需給構造が大きく変化したのは明らかである。
貿易収支およびサービス収支の合計である貿易・サービス収支は2022年に約▲21.1兆円、2023年に約▲9.4兆円、2024年に約▲6.5兆円と順当に縮小しているが、これらは歴代の赤字額で1位、4位、6位であり、決して小さな規模ではない(図表③)。
【図表③】

ちなみに、貿易・サービス収支はパンデミック前の5年平均(2015~19年)では約+1兆円の黒字、10年平均(2010~19年)では約▲2.5兆円の赤字であった。
日米金利差が縮小しても円安が修正されない背景に、このような需給構造の変化があったというのは筆者の従前からの基本認識である。
この間の円安インフレで日本の一般物価は大きく押し上げられており、名目GDPは600兆円超えが騒がれたが、実質GDPはほとんどゼロ成長だった。
この点は今回の主題ではないため割愛するが、例えばGDPのような生産測度ではなく、所得測度である実質GDI(国内総所得)で見た場合、日本経済はパンデミック前と現在で、実は若干縮小している。
円安インフレに伴う海外への所得流出によって、実質ベースで見た国民の所得環境は明確に劣化を強いられているのが過去3年間である。