英王室を敬愛するトランプ氏

 トランプ氏はこれまでも英王室への敬愛ぶりを公言し続けてきた。大統領1期目の2018年には非公式にウィンザー城を訪問、故エリザベス女王とお茶を共にした。2019年の公式訪問ではバッキンガム宮殿に招かれ、女王について「驚くべき女性」などと絶賛。昨年の大統領選のさなかには、エリザベス女王やチャールズ国王ら王族と並ぶ写真を見せびらかして自慢したこともあった。

トランプ大統領は2019年の訪英の際にはエリザベス女王からバッキンガム宮殿での晩餐会に招かれた(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 スターマー首相は今年初め、いわゆる政府効率化省(DOGE)を率い、トランプ氏に近い富豪のイーロン・マスク氏から「暴君」などと根拠のない誹謗中傷攻撃を受けていた。しかし「政府の効率化」を旗印に現在米国で政府職員の大幅削減で強引に大なたを振るっているマスク氏も、見方によってはこの上なく「非効率的」な英王室に公然と噛み付く意思はないようである。

 トランプ氏が崇拝する英王室は、スターマー政権にとって「猛獣トランプ」を手懐ける強力な武器とも言えるだろう。

トランプ大統領は2019年の訪英で、チャールズ皇太子(当時)夫妻とも夕食会を共にした(写真:AP/アフロ)

 しかし、政権の思惑と英市民感情には乖離(かいり)が生じる可能性もある。

 2018年の英国訪問の際には、ロンドンでおむつ姿のトランプ氏をかたどった巨大バルーンが浮かぶなど、大規模な抗議活動が展開された。その翌年には、トランプ氏の公式訪問を阻止せよという署名が186万件以上集まった。

 今回の国賓としての招待が発表された直後も、すぐに反対の声が上がった。その上、トランプ氏とバンス氏によるゼレンスキー大統領への仕打ちが起き、その様を目の当たりにした英国民の間で、公式訪問阻止を呼びかける署名活動が活発化している。