5月15日、アブダビを訪問したトランプ米大統領を迎えるアラブ首長国連邦のモハメッド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン大統領(写真:Emirates News Agency/APA Images via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)
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[ロンドン発]ドナルド・トランプ米政権は12月4日に発表した国家安全保障戦略で「トランプ外交の原則は伝統的な政治イデオロギーに根差したものではない。米国にとって何が有益かを念頭に置いている」と米国第一主義を改めて前面に押し出した。

中国は「倒すべき敵」ではなく…

「米支配層は福祉・規制・行政国家と軍事・外交・諜報・対外援助複合体を同時に構築する能力を過大評価した。グローバル化と自由貿易で中流階級と産業基盤を空洞化させた。同盟国が防衛費を米国民に押し付け、時に米国を紛争や戦争に巻き込んだ」と従来の支配層を非難した。

 最大のライバル、中国を名指しで敵扱いしないことで「新冷戦」の印象を薄める一方で、日本、欧州連合(EU)、韓国、オーストラリアに中国の過剰生産能力依存の解消、中国市場の歪みを是正する国際的取り組みへの参加、中国に輸出される技術・資本の統制を求めている。

 中国を「倒すべき敵」ではなく、世界経済の不均衡を生む「巨大な構造問題」として扱う枠組みに転換した。中国への直接批判は抑え、外交レトリックは柔らかくなっているが、経済安全保障・技術・サプライチェーン領域で対中包囲網を広げる構造になっている。