第4の軸は外交が国内政治の延長として扱われている点だ。国家の意思決定がトランプ氏個人への忠誠で動く。外交は国益のために設計されるのではなく、国内の敵・味方の2極化を強化し、トランプ氏個人の権威を再生産する舞台装置として機能している。
米国外交の4つの軸が「トランプ帝国」の経済システムとして機能
4つの軸が示すのはトランプ外交が単なる孤立主義ではなく、国家権力・個人ビジネス・暗号資産経済・国内政治を融合させた新しい支配モデルになっているということだ。国益と私益の境界が消え、外交そのものが「ディール化」している。
この構造は同盟国にとっては信頼性の欠如であり、民主主義にとっては制度的腐敗であり、国際秩序にとっては不確実性の源だ。トランプ外交の危険性は4つの軸が1つのトランプ帝国の経済システムとして機能している点に尽きる。
【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。