
(舛添 要一:国際政治学者)
調停役として、戦争の終結に貢献し、「平和の使者」としての役割を演じ、ノーベル平和賞を受賞しようというトランプ大統領の目論見は、容易には実現しそうもない。
ガザでの躓き
3月18日、イスラエル軍はガザ地区での戦闘を開始した。
1月19日から始まった停戦は、6週間の第一段階が3月1日に終わった。それまでに、ハマスが33人の人質を解放し、イスラエルは約2000人のパレスチナ人を釈放した。
第2段階では、ガザ地区から全てのイスラエル軍が撤退し、残る人質全員が解放される予定であるが、ハマスが第二段階への移行を要求したのに対し、イスラエルはさらなる人質の解放を求めてガザ地区への送電と支援物資搬入を停止した。
ウィトコフ米中東特使は、4月までの停戦延期を求めたが、ハマスは受け入れなかった。イスラエルは、ハマスがアメリカやアラブ仲介国の提案を拒否したことを理由に空爆に踏み切り、地上作戦も開始した。その結果、400人以上が死亡した。
これへの反撃として、ハマスは20日、テルアビブをミサイルや無人機で報復攻撃した。
第二段階に入る前に、戦争が再開されたのであるが、アメリカはイスラエルの行動を容認している。トランプ政権がイスラエル寄りであることは周知の事実である。それに加えて、トランプがガザの住民を移住させ、リゾート地として開発するというアイデアを出したことは、住民のみならず、アラブ諸国の反発を買った。
第三段階では、死亡した人質の遺体がハマスからイスラエルに引き渡され、ガザの復興が始まる予定であるが、第二段階に入ることができるかどうかも不明である。
国際社会は、これまで「二つの正義」を実現すべく、「二国家の平和共存」を追求してきた。その歴史を無視して、力を背景に「ディール(取り引き)」を求める商売人の発想では、パレスチナ問題が片付くわけがない。