
かつては国民の不満の「ガス抜き」の場だった全国人民代表大会
3月5日から北京の人民大会堂で行われていた、年に一度の全国人民代表大会(国会に相当)については、前回のこのコラムでお伝えした通りだ。
【前回記事】中国の国会にあたる年に一度の「全国人民代表大会」、審議する法案はたった1本
全国人民代表大会は3月11日に閉幕するが、過去30年以上見続けている「中国ウォッチャー」の私からすれば、いまさらながらに「国会の形」が様変わりしたと思わざるを得ない。
ひと言で言えば、2012年の胡錦濤政権までは、約3000人の「国民の代表」が約2週間にわたって北京に集結する「国権の最高機関」(憲法第57条)は、いい意味で国民の不満の「ガス抜きの場」になっていた。国民(とその代表)は、普段は西側諸国から見たら非民主的な共産党政権に支配されているが、この2週間だけは言いたいことを言う。共産党政権側も、「中国のウミ」を噴出させて、よりよい社会を築いていこうという態度だった。
例えば、2010年の大会では、直前に北京のメディアが結集して、「今回の大会で戸籍制度改革を断行すべきだ」という共同社説を掲載。胡錦濤政権を突き上げた。中国の戸籍制度は、都市戸籍と農村戸籍に分かれ、「現代版アパルトヘイト(人種隔離政策)」と世界から叩かれていたからだ。
結局、2週間の討論では決め切れず、最終日に温家宝首相が会見で釈明した。
「抜本的な改革には至らなかったが、今後は農村部の代表を増やしたり、できる都市部から戸籍制度改革を進めていくと約束する」