ところが2013年に習近平政権が誕生してからは、「習近平総書記を礼賛する場」に変わっていったのである。CCTV(中国中央広播電視総台)がどの代表にマイクを向けても、目をキラキラ輝かせながら流暢に語る。「習近平総書記のご英断に導かれて中国経済は絶好調です」「わが村は今年も豊作で、習近平総書記に感謝しかありません」「これからも変わらず、習近平総書記を核心とする共産党中央委員会についていこうと再認識しました」……。

堂々と政府批判していたあの教授も…
3月9日の『新聞聯播』(CCTVの夜7時のメインニュース番組)のトップニュースは、中国を代表する経済学者の一人、林毅夫(りん・きふ)北京大学教授のインタビューだった。私が北京大学に留学していた30年前は、大学一の人気教授で、授業で中国経済の現状を歯に衣着せず批判していた。その後、世界銀行の副総裁兼チーフエコノミストにまで上り詰めた。
そんな林教授(中国人民政治協商会議委員)は今回、こう述べた。
「われわれの昨年の経済発展の過程は、非凡なものだったが、通年の経済成長5%を達成した。加えて、都市部と農村部の住民の収入も5.1%増えた。これらの成績を収めたカギとなったのは、やはり習近平総書記の舵取りがあったことだ。このことこそが(経済成長の)最大の保証なのだ。
長期的に見れば、わが国には大市場の有利さがあり、産業チェーンを最も万全に配置できる有利さがある。これらはすべて、われわれの信頼の源だ。外部の環境からいかに多くの挑戦を受けようとも、われわれは自分のことをやりさえすればよいのだ。そうすれば必ずや、中国式現代化によって強国の道を推進し、民族復興を構築していける」