(写真:Aoraee/Shutterstock)

 3月21日は、春分だった。古代中国においては、墓参して先祖の霊を慰め、合わせて五穀豊穣を願った日だ。

 ところが、生き馬の目を抜く現代中国においては、そうした「万事如意」(万事が意のままに)となるとは限らない。かつ、一度は習近平主席が説くスローガン「中国の夢」を実現したとしても、引き続き「わが世の春」が続く保証はないのだ。

10年前の中国トップ10の大富豪、その半数は転落

 例えば、10年前の2015年の中国の「長者番付ベストテン」は、以下の通りである。出所は、米経済誌『フォーブス』が同年10月に発表した「2015フォーブス中国400富豪ランキング」だ。なお、推定資産額は億人民元で表示しているが、20倍すると日本円にほぼ等しくなる。

2015年、米経済誌『フォーブス』が掲載した中国富豪トップ10ランキング

 この錚々(そうそう)たる大富豪のうち、トップの王健林氏はすでに失脚し、「万達帝国」は崩壊した。2位の馬雲(ジャック・マー)氏も経営の第一線を追われ、アリババは6分割された。馬氏は、先月17日に習近平主席が主催した「民営企業座談会」で、久々に公の場に姿を見せた。

万達グループ創設者の王健林氏。2015年、『フォーブス』誌では中国一の富豪にランクされた(写真:AP/アフロ)

 5位の王文銀氏は、後述するように「正威帝国」崩壊への道を、真っ逆さまに転げ落ちている。

 8位の許家印氏は、「広州の皇帝」と仰がれたが、コロナ禍の不動産バブル崩壊で「恒大帝国」は8分割され、本人もお縄を頂戴してしまった。アジアチャンピオンに2度も輝いたサッカーチームも、今年1月に消滅した。そして10位の丁磊氏も、昨年秋までにひっそりと経営から退いた。

 こうして見ると、わずか10年前に栄華を極めたベストテンのうち、半分は消えているのである。日本で詳しく調べたことはないが、ソフトバンクの孫正義CEOやユニクロの柳井正CEOなど、「10年前の大富豪」はほとんど健在だろう。改めて中国社会が、日本とは比較にならないハイリスク社会であることが窺い知れる(その分、チャンスも多いが)。