「第二の恒大」になるか

 2017年、王文銀氏は、上述の「広州の皇帝」こと恒大集団の創業者・許家印氏と会い、両雄は意気投合した。もとより、どの国でも銅業界は、不動産業界と深いつながりがある。

 そこで正威は恒大に、1300億元(約2.6兆円)の巨額の融資を決めた。これで両社は、一蓮托生のような格好となった。

 ところが、あろうことか周知のように、中国不動産業界ナンバー1の恒大集団が、3年にわたるコロナ禍や過度な経営拡大、中国政府の不動産引き締め政策などによって、あっけなく崩壊してしまったのだ。2023年9月には、許家印氏本人も、当局によって身柄を拘束された。

 これに追い打ちをかけるように、正威と貴州省の貴陽銀行との訴訟が起こった。2021年6月に、期限3年で融資した16億元(約320億円)の返済が滞っているとして、貴陽銀行が正威を提訴。その訴訟の中で、正威集団の乱脈経営や粉飾ぶりが公になっていったのだ。訴訟も、昨年12月に貴陽側が全面勝訴した。

 こうして王氏は、昨年1月までに、正威集団の経営から降りた。だがいまや、この巨大企業が、「第二の恒大」になるのではと囁かれているのだ。いずれにしても、正威がもし倒産となれば、「V字回復」を目指す中国経済に、大きなマイナスの影響を与えるのは確かだ。