「世界の銅王」
そして今年の春分の晴れがましい日に、中国で飛び交ったのが、上記で5位の「正威集団」が、「第2の恒大集団」になるかもしれないという話題だった。
創業者の王文銀氏は、「世界の銅王」と呼ばれた立志伝中の人物である。1968年3月に、中国中部の安徽(あんき)省の安慶に生まれた。中国で天安門事件が起こった1989年に、名門・南京大学の天文学部に入学。1993年に卒業すると、上海の会社に就職した。
2年後の1995年、香港に隣接した経済特区の深圳(しんせん)で独立し、電線や電源を生産する深圳携威電線製品廠を創業した。その後、中国の経済成長に後押しされるように工場を拡大していき、1999年に会社を、銅線など銅製品全般を扱う正威国際集団とした。
2003年に中国をSARS(重症急性呼吸器症候群)が襲うと、景気悪化をチャンスと捉え、中国国内の銅鉱山を次々に買収していった。2008年にアメリカ発の金融危機(リーマンショック)が起こると、同様にチャンス到来と捉え、ジュネーブ・アメリカ・シンガポールの3カ所に、海外本部を設立。海外の同業他社の買収を、華々しく展開した。
2021年には、20数カ国で事業を展開し、世界の銅鉱山の約1割を抑えて、「世界の銅王」の異名を取るまでになった。「正威帝国」は、年間売上高15兆円、従業員3万人に膨れ上がった。
王氏は、その「光頭老板」(グアントウラオバン=スキンヘッド社長)と呼ばれる独特の出で立ちで、世界の銅ビジネス業界で異彩を放っていた。ちょっと日本の財界にはいないタイプの風采で、かつて大阪で「バブルの帝王」を呼ばれた許永中氏にどことなく似ている。