3月5日から開かれた中国・全国人民代表大会(全人代)(写真:新華社/アフロ)

 今月4日から全国政治協商会議(全国政協)、5日から全国人民代表大会(全人代)、2つ合わせて通称「両会」と呼ばれる春の大政治イベントがスタートした。全人代の開幕式では李強首相が政府活動報告を読み上げた。だが、今年の全人代はいま一つニュースバリューが薄い。理由の一つは全人代の主役であるべき李強首相の存在感がないこと。もう一つは最近のトランプの派手な言動の影に、中国の両会ニュースがかすんでしまったこと。

 だがもっかの複雑な国際環境において、習近平が今年、どのような政策、戦略を立てているのかを見定めることは重要だ。今年の全人代政府活動報告の重要ポイントを拾ってみたい。2回に分けて解説する。

 (福島 香織:ジャーナリスト)

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テクノロジーより消費に重点

 まず経済については、2025年の国内総生産(GDP)成長目標は5%前後と前年と同じ表現で設定され、これは多くのチャイナウォッチャーが以前から予想していたとおりとなった。消費者物価指数(CPI)目標は2%前後で2005年以来最低。さらに積極財政政策を実施するとしており、財政赤字率は4%前後に設定され過去最高となった。

 超長期特別国債の発行は1.3兆元で前年度より3000億元増。地方政府特別債券(インフラ債)は4.4兆元で前年比5000億元増。

 中国経済については「外部環境はさらに複雑で厳しくなっている」として「関税障壁がさらに増えたことなどが中国の貿易、ハイテクなどにさらに大きなショックを与えている」と指摘。中国国内消費の不振、民衆の失業圧力、地方財政難状況などの問題について直言しつつ、「中国は市場、産業体系、人材などの優位性があり、経済の長期的な好調の趨勢に変更はない」とした。

 新華社によればこの政府活動報告の中で、「消費」という言葉は31回(昨年は21回)、「科技(テクノロジー)」は29回(昨年は26回)と増えていた。経済政策の重点として科技より消費が上位に来たことが注目された。同時に人工知能(AI)についての内容が大幅に増えていた。年初に発表されたDeepSeekなどの技術などの反響から、かなりこの方面への自信をつけたのかもしれない。

 消費についてはかねてから中国経済回復の一つの鍵として注目されている。