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(福島 香織:ジャーナリスト)
中国の生成AIスタートアップ、DeepSeek(ディープシーク)が1月20日に最新モデルをリリースし、「中国版ChatGPT」として話題をさらっている。開発したのは中国の起業家・梁文峰で、低コストなのに性能がいいと注目を集め、リリース1週間後にはアップルストアで無料ダウンロードされたAIアプリとしてはChatGPTを抜き1位となった。
このDeepSeekがAIにおける米国の優位性を脅かすとして1月27日、エヌビディア株が17%も暴落して時価総額5927億ドルが蒸発。海外メディアはこれを1957年10月に旧ソ連が人工衛星スプートニク打ち上げに成功したことで、ミサイル開発における米国の優勢を脅かした「スプートニクショック」になぞらえて報道。このショックによる米国企業の市場価値の損失はだいたい1兆ドルに上るとも言われた。
しかし、DeepSeekを利用する人が増えるにつれて、その化けの皮が少しずつ剥がれてきている。DeepSeekの危険性について考えたい。
DeepSeekの勢いは止まらない?
DeepSeekは開発費580万ドル(ChatGTPは1億ドル以上)、実質の開発期間は数カ月という超低コストで作られたとされるAI。 使われた半導体(GPU)は米国の輸出規制対象にされていないエヌビディアのチップと言われる。
各種報道によると、米国の生成AIスタートアップAnthropicなどがAIのトレーニングに50万個以上のGPUを使うところ、DeepSeekはわずか5万個で実現したという。つまり高性能GPUに依存しないAI開発の手法を編み出し、しかもその研究成果を惜しみなく公開したことが、シリコンバレーを震撼させたと言われている。
米下院中国特別委員会はトランプ政権に対して、対中半導体輸出規制をいっそう厳しくして、これまで対象外だった半導体についての規制も検討するように要請した。
だが、そもそも米国の対中半導体規制による半導体不足という厳しい環境に適応するために生まれたイノベーションならば、半導体規制を強化しても、DeepSeek躍進の勢いに歯止めがかけられるかどうかは疑問かもしれない。