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(山田敏弘・国際ジャーナリスト)

「ChatGPTを脅かす中国製AI登場!」から変わってきた報道のトーン

 中国のスタートアップ「DeepSeek」が低コストの生成AIを開発したニュースが世界を揺るがしている。

 1月20日からDeepSeekが提供する生成AI「DeepSeek-R1」が無料ダウンロードできるようになったことで、一気に注目が集まった。これまでの常識を覆す低予算と決して最先端ではない半導体によって、莫大な予算と最先端半導体を投入している米OpenAIの「ChatGPT」に匹敵するAIを開発したというのだ。

 それがもし事実なら、現在、米国が先行するAI開発の優位性が揺らぐ可能性がある。そのためAI向けの最先端半導体を提供しているNVIDIAの株価が17%も下落する事態になった。日本円にしておよそ92兆円分の時価総額が1日で吹き飛んだ計算になる。

DeepSeekショックで米NVIDIAの株価が急落、1日でトヨタ自動車の2倍分の時価総額が吹き飛んだ(写真:ロイター/アフロ)
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 IT業界はいまDeepSeekの話題で持ちきりになっている。筆者も先日、別件の取材でアポを取っていた海外情報機関の元サイバー作戦責任者だった人物との会話で、DeepSeekの話題でかなり盛り上がった。中国の動きを警戒する世界のスパイ機関関係者らの間でも、ちょっと前からDeepSeekはかなり注目を集めていたという。

 ただ、当初の衝撃から数日が経ち、メディアも報じ方も徐々に変わってきたように思う。「ChatGPTに突如、強力なライバルが現れた」というトーンから、このDeepSeekの実態と、中国製AIの問題点を冷静に議論するトーンに変化し始めている。本稿でもDeepSeekの問題点にフォーカスして論じてみたいと思う。