中国から彗星のように現れたディープシーク(写真:ロイター/アフロ)中国から彗星のように現れたディープシーク(写真:ロイター/アフロ)

 1月27日、GPU(画像処理半導体)の世界で圧倒的なシェアを持つ米エヌビディアの株価が17%下落した。中国から彗星のように現れたディープシーク(DeepSeek)の存在である。ディープシークのモデルにはあからさまな偏りがあるが、巨大なリソースに頼らずともAIを開発できるということを示した事実は大きい。AIの次のステップ、AGI(Artificial General Intelligence、汎用人工知能)の実現も期待が高まる。(小林 啓倫:経営コンサルタント)

半導体業界の巨人を襲った「ディープシーク・ショック」

 AI時代の到来により、さまざまな企業に注目が集まっている。その筆頭とも言えるのがエヌビディア(Nvidia)社だ。1993年に創業された企業で、GPU(画像処理半導体)の生みの親として広く知られている。

 簡単に言ってしまうと、いまのAIはディープラーニングやニューラルネットワークといった仕組みを使って実現されており、それを開発する際に欠かせない半導体がGPUということだ。

 そして、エヌビディアはそのGPU市場の8~9割という圧倒的なシェアを手にしている。企業の時価総額で見ても、iPhoneで知られるアップルと世界一を争っていると言えば、その凄さがお分かりいただけるだろう。

 そのエヌビディアを1月27日、大きな衝撃が襲った。同社の株価が1日で17%も下落したのである。時価総額にして、実に約5900億ドル(約92兆円)が1日にして失われてしまった計算になる。

 なぜAI時代の根幹を担うと言っても過言ではないエヌビディアの評価が、これほど急速に下がってしまったのか。その答えは、今回の出来事に付けられた名前──「ディープシーク・ショック」にある。