評価額が2200億円程度に達したSakana AI評価額が2200億円程度に達したSakana AI(画像は同社のウェブサイトから)

 日本初のAIスタートアップ「Sakana AI」が画期的な技術を発表した。それは、「AIサイエンティスト」。文字通り、AIがアイデア出しから実験の設計・実行、論文執筆、査読までを自動で行う機能である。まだ機能の制約や問題点も少なくないが、AIが科学者を置き換えるというSF的な現実が到来しつつある。(小林 啓倫:経営コンサルタント)

躍進が続くSakana AI

 以前の記事「【あのエヌビディアが出資】急成長「Sakana AI」とは何者か?設立1年で評価額11億ドル越えユニコーンの革新性」で取り上げた、日本発のAIスタートアップ「Sakana AI」の躍進が続いている。

 9月17日、三菱UFJフィナンシャルグループやNECなど国内企業10社からの資金調達を行ったことが発表され、既に公表されていた米半導体大手Nvidia(エヌビディア)からの資金調達と合わせて、およそ300億円を確保したと報じられている。

サカナAIに3メガバンクなど出資 一連の資金調達約300億円(Reuters)

 報道によれば、今回の三菱UFJフィナンシャルグループらの出資に際して、Sakana AIの評価額は2200億円程度に達した。

 前回の記事でも解説したように、スタートアップ界隈では、「企業としての評価額が10億ドル(約1500億円)以上で、設立10年以内の未上場のスタートアップ」を「ユニコーン(一角獣)」と呼ぶ(見つけようとしても見つからないほどレアな存在なので、想像上の生き物であるユニコーンに喩えられてこう表現される)。

 そして、Sakana AIが設立されたのは2023年7月。ということで、これで名実ともに、同社はユニコーン企業の仲間入りを果たしたわけだ。

 Sakana AIが注目を集めているのは、こうした資金調達のような、ビジネス上の評価を得ているためだけではない。今年8月、Sakana AIはある画期的な技術を発表し、テクノロジー界隈で話題となった。それが「AIサイエンティスト(AI Scientist)」と名付けられた技術だ。

 これは直訳すると「AI科学者」という意味になるが、その名前通り、AIが人間に代わって研究開発を行うという技術である。彼らはこの発表を行った日本語記事に、「AIが自ら研究する時代へ」という刺激的なサブタイトルを付けている。この記事がいかにAIの専門家や研究者の間で注目を集めたか、想像に難くないだろう。

 いったいAIサイエンティストとはどのような技術なのか。本当に「AIが自ら研究する時代」が到来する可能性があるのか、簡単に紹介していこう。

 まずはSakana AIが発表した論文に基づいて、AIサイエンティストとはどのような技術なのかまとめてみたい。