生成AIにはまり込んでしまう人が増えている(写真:maruco/イメージマート)生成AIにはまり込んでしまう人が増えている(写真:maruco/イメージマート)
  • OpenAIの幹部が指摘した生成AIの懸念が現実のものになりつつある。それは、生成AIの中毒性だ。
  • 事実、米国のQ&Aサイトには、生成AIにはまり、勉強などが疎かになっている若者の声が上がっている。
  • ある研究によれば、生成AIの使用用途の第2位は性的コンテンツの生成だという。生成AIとの性的ロールプレイに勤しむ人は着実に増えているようだ。

(小林 啓倫:経営コンサルタント)

 ギリシャ神話に、ピグマリオン(ピュグマリオーン)という名前の王が登場する。

 現実の女性に失望していた彼は、ある日、自ら理想の女性像を彫り上げる。その出来があまりに良かったのか、彼は彫像をひどく気に入り、そばから離れないようになってしまう。次第に衰弱するピグマリオンの姿を見かねた女神アフロディーテは、その彫刻に命を吹き込み、ガラテアという女性に変貌する――という物語だ。

 自らの創造物に恋をするなんて……と思ったかもしれないが、現代を生きる私たちもピグマリオンと大差ないようだ。最近の研究により、私たちは新たな「自らの創造物」にはまっている現実が浮き彫りになっている。その創造物とは、もちろん生成AIである。

生成AIは「非常に中毒性が高い」

 昨年のことになるが、米国のニュースサイトThe Hillが興味深いニュースを報じている。ChatGPTを開発したOpenAI社のミラ・ムラティCTOが、AIの中毒性というリスクについて、社内で綿密な調査を行うよう指示したというのである。

 それによると、ムラティはあるイベントで行われたインタビューにおいて、AIが進歩するにつれて「非常に中毒性が高いものになる」恐れがあると指摘。その結果、「私たちがある意味でそれらの奴隷になってしまう可能性」すらあるとの見解を示した。まさにギリシャ神話のピグマリオンのようになりかねないというわけだ。

 ChatGPTという、世界最高クラスの生成AIアプリケーションを開発している企業の幹部の発言というだけで、この指摘は注目に値すると言えるだろう。さらに彼女の懸念を裏付けるように、生成AIのユーザーからも実際に「中毒になってしまった」という発言が出てきている。

 たとえば米国で人気のQ&AサイトQuoraには、「Character AI」というサービス(対話型生成AI技術を活用して、ユーザーが作成したキャラクターや既存のキャラクターと自然な会話を楽しむことができるサービス)に関連して、「どうしたらCharacter AIへの長期的な中毒を止められるでしょうか?(How do I stop a long-term addiction to character AI?)」という質問が投稿されている。

Quoraに投稿されたAI依存症ユーザーの切実な言葉Quoraに投稿されたAI依存症ユーザーの切実な言葉

 それに対して投じられた返信のひとつが、次のようなものだ。