気づかないだけで、覚せい剤は身の回りで確実に増えている(写真はイメージです)

(廣末登・ノンフィクション作家)

 昨今、覚せい剤の摘発記事に接し、驚かされることがある。それは、摘発される量の多さだ。何グラム、何パケなどのレベルではなく、ハンパない量が摘発されている。

シャブ(=覚せい剤)市場としてオイシイ国ニッポン

 たとえば、平成30年2月17日に、成田空港で2人のカナダ人が覚せい剤密輸で逮捕された。

 2人は別々の飛行機で来日し、面識はないという。カナダ人の男女が相次いで逮捕され、あわせておよそ47kg、28億円相当である。この日、1日のみの摘発量で、成田税関支署の平成30年の覚せい剤押収量の9割にあたるとのこと。

 平成28年に警察が検挙した覚せい剤の密輸入事件(82件)について、その仕出地の内訳を見ると、香港と台湾を除く中国(24件、29.3%)が最も多く、アメリカ(14件、17.1%)、香港(8件、9.8%)、台湾(8件、9.8%)と続いており、カナダというのは珍しい。

 現在は、国際的な政治的事情と当局の取り締まり強化を受け、北朝鮮やロシアンルートが無くなったため、南方からのチャイナルートが主な供給源だと言われている。

豪で870億円相当の覚せい剤押収 過去最多、中国からか

オーストラリア西部ジェラルトンで1.2トンのメタンフェタミン(結晶状覚せい剤)を押収後、容疑者らを見張る捜査員ら。このメタンフェタミンは、船からの荷降ろし後に差し押さえられた。当局は同船の出港地を中国とみている。豪連邦警察提供(2017年12月21日撮影、公開)。(c)AFP PHOTO / AUSTRALIAN FEDERAL POLICE〔AFPBB News

 ちなみに、平成30年、東京税関が摘発した覚せい剤事件の押収量は、およそ493kgにのぼり、昭和60年の統計開始以来最多となったそうである。

 一方、全国の情勢をみると、覚醒剤密輸入事犯の検挙件数は増加し、平成26年以降3年ぶりに100件を超え、いわゆる運び屋による密輸入事犯の検挙が相次いだため、前年比で大幅に増加した。押収量は前年比で減少したものの、洋上取引や船舶コンテナ貨物の利用による大量密輸入事犯の検挙に伴い、前年に引き続き1000kgを超えたと、警察庁の報告にある(警察庁組織犯罪対策部組織犯罪対策課「平成29年における組織犯罪の情勢」)。