中国から現れた彗星「ディープシーク」とは

 ディープシーク(DeepSeek)とは、ある中国企業の名前であると同時に、同社が発表した生成AIサービスの名前(こちらのリンクから実物を確認できる)である。

 そんなのは初耳だ、という方も多いだろう。それもそのはず、ディープシーク社はもともと企業内のプロジェクトとして始まった存在で、独立した企業として事業を開始したのは2023年5月。創業して2年にも満たないスタートアップだからだ。

 社員数も(各種報道で差があるのだが)150~200名程度と目されており、決して大企業ではない。では、軍需産業のように特殊な製品を扱っているのかというとそうでもなく、ChatGPTでお馴染みのOpenAIと同じように、生成AIのモデル(AIを動かす頭脳となる部品)と、そのモデルを使った生成AIサービス/アプリケーションを開発している。

 とても半導体業界の巨人にショックを与えるほどの存在とは思えないかもしれない。しかし実は、彼らがリリースしたスマホ用生成AIアプリ「ディープシーク」が、今年1月27日、アップルのアプリ市場「アップストア」の無料部門において、ChatGPTを抜いて首位に立つという快挙を成し遂げた。それが一つのきっかけとなって、ディープシーク・ショックが生じたのである。

 とはいえ、ChatGPTがリリースされた2022年末ならいざ知らず、いまさら生成AIアプリが一つ増えたところで、なぜそれほどの衝撃なのだろうか。それはディープシークが、不可能だと考えられていた形で、その性能を実現することに成功したからである。

 まずはディープシークの性能面から見てもらおう。次の文章は、「なぜ高性能なGPUがAIモデル開発に欠かせないのか、専門知識がない人にも分かるように、日本語で200文字前後で分かりやすく説明してください」というプロンプトに対して、ChatGPTとディープシークが答えてくれた内容だ。