OpenAIのパクリなら訴訟の対象に

 さらに禁止事項について、こう決められている。

「当社のサービスのいずれかを変更、コピー、リース、販売、または配布すること。データまたは出力(以下に定義)を自動的またはプログラム的に抽出すること」

「出力を使用して、OpenAIと競合するモデルを開発すること」

 つまり、仮にDeepSeekがChatGPTの出力を拝借しているとしたら、それが判明した時点で「DeepSeek-R1」は違法アプリということになる。スマホなどへ正規にダウンロードできなくなるし、提供元のDeepSeek社はおそらく莫大な損害賠償請求の対象になる可能性がある。トランプ政権なら経済制裁対象とする可能性もありえるだろう。そうなると、DeepSeekと関わる企業はすべてアメリカ企業とビジネスができなくなり、国際的な金融やりとりもできなくなるだろう。

 もっとも今回のDeepSeek騒動を別の角度から眺めれば、アメリカのテクノロジー企業や投資家にとって、自分たちが投資先に正しく資金を投入しているかどうかを冷静に振り返るためのいい機会になったかもしれない。トランプ政権発足時に、ソフトバンクグループの孫正義社長がOpenAIやオラクルとともにぶちあげた、アメリカのAI開発に4年間で5000億ドルを投資するとの計画についても、「本当にその価値があるのか」と再検討する視点も必要だろう。

 まだ米英情報機関を中心に世界各国でその“正体”について調査が続いているDeepSeek。当初の衝撃とは裏腹に、今後は「Deep(深層)」まで「Seek(追跡)」されることになりそうだ。