専門家たちが指摘する「アウトプット泥棒」の疑い

 このニュースを受けて、欧米の専門家らがまず指摘したのは「DeepSeekのAIが正当なものかどうか」ということだった。

 多くの専門家は、おそらくDeepSeekはアメリカ企業が開発しているAIモデルを使ってAIを構築したのではないか、と疑っているのだ。具体的には、マイクロソフトが莫大な投資をしているOpenAIが開発しているChatGPTや、メタ社が開発している生成AI「Llama」(ラマ)の両方を「悪用」しているのではないか、と見ている。

 とくに疑われているのが、AIの「アウトプット(出力=回答)泥棒」の可能性だ。

 分かりやすい例えを使って説明しよう。医療に関して他の追随を許さない情報と経験を誇る「知の巨人」のような医者がいたとする。その名医にニセ医師が何億回も質問し、出された回答を全てコピーしてパクってしまうのだ。患者たちから質問されたニセ医師は、パクった回答をさも自分の回答のように提示する。それだけで、それなりの「知の巨人」になれる。DeepSeekも他のAIの回答をパクっているではないか、という指摘だ。

 前出の情報機関の元サイバー作戦責任者は筆者に、「アメリカやイギリスなど欧米情報機関は昨年8月ごろからこのDeepSeekのAIを水面下で入手して調査に乗り出しており、現時点ではDeepSeekのAIモデルそのものは完全なフェイクではないと見ている」と述べた。

 ただ「他のAIが出す答えなどを勝手に盗んでいる可能性が高く、まだ調査が行われている段階だが、その疑念も含めた途中経過は米政権に伝わっているはずだ」と指摘するのだ。