(国際ジャーナリスト・木村正人)

「クオンツ投資四天王」

[ロンドン発]昨年12月4日、米国国務長官首席補佐官(2013~15年)を務めたデービッド・ウェイド氏は米デジタルメディア「ザ・ヒル」に「米国の人工知能(AI)は『スプートニクの瞬間』を迎えた」と題して中国とのAI開発競争に絶対に負けてはならないと呼びかけた。

 冷戦最中の1957年10月4日、旧ソ連が世界初の人工衛星スプートニク1号の打ち上げに成功し、先を越された米国など西側諸国に衝撃が走った。いわゆる「スプートニク・ショック」の瞬間が“米中AI開発戦争”に訪れるという警鐘である。

1957年10月4日、 R-7 セミョルカロケットによって打ち上げられるソ連の人工衛星スプートニク1号。世界初の人工衛星打ち上げ成功は米国にショックを与え、その後の熾烈な宇宙開発競争の幕開けとなった(写真:Science Photo Library/アフロ)
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 ウェイド氏が注目したのはオープンソースの大規模言語モデル(LLM)を開発する中国のAI企業「DeepSeek(深度求索)」。起業家の梁文峰氏は数学とAIを活用するクオンツヘッジファンド「High-Flyer」を共同でつくり、わずか6年で「クオンツ投資四天王」の一角に食い込んだ。

「AIが世界を変える」が信念の梁氏は2023年5月にDeepSeekを立ち上げた。米国の輸出規制が強まる前にNvidiaのハイエンドGPUを約1万個調達してLLMの開発を進め、「中国のサム・アルトマン」と呼ばれるまでになった。