米ロ主導で進むウクライナ停戦協議=写真は2018年(写真:AP/アフロ)

米ロ主導で進み始めたウクライナ停戦協議に、台湾が戦々恐々としている。ロシアによる領土拡大が認められるような格好になれば、中国による台湾併合の野望を後押ししかねないからだ。トランプ大統領のディール外交で半導体工場を台湾から米国に移転させようという動きもあるが、そうなると台湾は「シリコンの盾」を失うことにもなりかねない。

 (福島 香織:ジャーナリスト)

 ドナルド・トランプ米大統領は12日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領との電話協議で和平交渉を開始することで合意したと発表し、続いて米国とロシアは18日、サウジアラビアの首都リヤドでウクライナ紛争の停戦などを協議する初の高官会合を開いた。協議は継続するそうだ。ロシアは今のところいかなる譲歩もしておらず、一方で米国はかなり、ロシアに寄り添っている。

 このことで、日本人として最も気になるのは、やはり台湾の立場だ。なぜならロシアとウクライナの関係は、これまで中国と台湾の関係に例えて分析されてきた。トランプが就任式で言及した「マニフェスト・デスティニー(神のさだめ)」としての領土拡張や、力による平和の考え方も合わせると、中国の武力統一のリスクに直面する台湾としては心穏やかではいられまい。

 米ロ高官によるリヤドのロシア・ウクライナの停戦協議は米国からはルビオ国務長官、ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障担当)、ウィトコフ中東特使、ロシアからはラブロフ外相、ウシャコフ大統領府外交政策顧問らが出席した。会議は約4時間半におよび、協議継続で合意したという。当事者のウクライナ、欧州は招待もされていなかった。

 米国務省報道官によれば、「全ての当事者が受け入れ可能で、持続的かつ永続的な方法で可能な限り早期」に戦争を終結させるため、高官級チームを任命するという。

 一方で12日にベルギー・ブリュッセルで開催された、ウクライナと同盟関係にある40カ国以上が参加した「ウクライナ防衛コンタクトグループ」でヘグセス国防長官は、ウクライナが2014年以前の国境に戻ること(クリミアを取り戻すこと)は非現実的だとし、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟の可能性は小さいと述べていた。

 この条件で終戦協定に同意すれば、これはウクライナにとって事実上の敗戦ということになる。また、ヘグセスは米国のウクライナ支援を大幅に縮小し、欧州連合(EU)諸国が今後「圧倒的な」割合の援助をウクライナに提供する必要があると主張した。

 戦争が終息に向かうことは喜ばしいが、こういう形であれば、大国が力ずくで領土を奪う先例がまかり通ったということになる。それは世界に平和をもたらすというよりは、新たな戦争の始まりを予感させる話ではないだろうか。

 まず、懸念されるのは台湾への影響だ。