2025年1月、ドナルド・トランプ氏が再び米大統領の座に就く。閣僚を始めとする主要ポストの人選が進み、新たなトランプ政権の姿が見え始めた。米国の政権交代によって、日米の経済にはどんな影響が考えられるのか。元日銀の神津多可思・日本証券アナリスト協会専務理事が解説する。(JBpress編集部)
(神津 多可思:日本証券アナリスト協会専務理事)
高インフレが与党・民主党の敗因にも
注目された米国選挙は結局、トランプ元大統領の勝利に終わった。事前には接戦と言われていたにもかかわらず圧勝であり、かつ上院、下院ともに共和党がマジョリティを取る結果となった。米国社会で起こっている変化について、世界の多くのマスコミや評論家に、程度の差こそあれ、何らかの認識の齟齬があったように感じられてならない。来年からのトランプ2の下で、日米経済はどのような環境に置かれることになるだろうか。
グローバル経済は、1990年代以降の統合加速の状況から、2010年代に入ると逆方向にギアが入った。おそらくその遠因は2000年代後半の世界金融危機にある。米中対立は逆方向ギアの典型であり、ロシアによるクリミア、さらには最近のウクライナへの侵攻もグローバル経済を分断する方向に作用した。
そうした動きは、グローバル経済全体としては供給力拡大のスピードを鈍らせる。一方、需要の方は、新興国の目覚ましい経済成長の結果、すぐにはその勢いは鈍らないようだ。
その結果、マクロ的な需要と供給の関係は、どちらかといえば、それ以前の物価があまり上昇しない環境から、よりインフレ的なものへと変化した。
コロナ禍のショックでみえづらくなったところがあるが、そうした構造的な変化は続いており、その上に米国では大規模な財政支出が行われ、インフレ圧力は近年経験したことのないほど強いものとなった。
2021年以降続いた高いインフレ率が、今回の選挙で、与党であった民主党が敗因した大きな原因の1つであることは間違いない。
米国のインフレ率は、今年に入ってようやく低下し始め、それに連れて金利も下がってきた。しかし、上述のような構造的な変化の下で、かつてのような落ち着きを取り戻せるかどうか、なお不透明だ。だからこそ長期金利は、一本調子で下がるのではなく、新しい均衡点を探す動きをしている。
そこにトランプ2が来る。