厳格な移民政策、物価面ではインフレに作用

 財政については、中身こそ変わるが、マクロ的な需要刺激の強さはあまり変わらなそうである。そして高関税が導入される。これは輸入物価を押し上げる。

 さらに移民について厳格な政策が採られるとみられている。米国でも労働人口の高齢化は進んでおり、労働力の流入制限は、社会の安定にはプラスに作用するかもしれないが、物価面ではインフレ的である。

 このように、マクロ経済環境としては、従来よりもインフレ的であり、そのため為替レートへの影響は複雑になる。高インフレ国の通貨は安くなるという面からはドル安要因だが、高インフレを背景に高金利となるのであればドル高要因になる。

 このように、米国サイドでは、ドル安、ドル高、双方の要因が考えられるが、日本円を取り巻く状況はどうだろうか。

 そもそもグローバル経済の需給が分断の影響でタイト化するならば、日本のインフレ率についても2%の目標が達成できる可能性は高まる方向にあると考えられる。すると金利も、どこまでかは不明ながら現在よりは高いであろう中立方向へと引き上げられ、それは円高要因となる。

 他方、日米のインフレ率の差は、現状はあまり変わらなくなっており、それがもたらす円高圧力は小さくなっている。したがって、インフレ率の差の面からの円高圧力がどうなるかは、今後、米国のインフレがトランプ2の下でどこまで上昇するか次第ということになる。

インフレと闘ってきた米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長(右)の金融政策に対して、「復活」したトランプ氏が圧力をかける展開も予想される。写真は2017年11月、前のトランプ政権時、パウエル氏がFRB議長に指名されたときのもの(写真:ロイター/アフロ)

 それでも米国のインフレ率が、これまでのように日本よりは高い水準へと上がっていくのであれば、高インフレ国の通貨は安くなるので、この観点からも円ドル為替レートには従来よりは円高の力が作用する可能性がある。

 ただ、物価と金利を併せて考えた実質金利は米国の方が高い。それは経済の実力の差を反映したものだ。また、足元の物価、金利では説明できない円安の部分も大きくなっている。したがって、かつてのような円ドル為替レートの水準がトランプ2の下で早々に実現するとはあまり考えられないように思う。