米国の金融市場で「トランプラリー」が続いている。トランプ陣営に巨額の選挙資金を提供したイーロン・マスク氏が率いる電気自動車(EV)のテスラの株価が急上昇するなど、株式相場は活況を呈している。だが、トランプ政権の政策は長期金利の上昇を招くとみられ、今後、株価は暴落し、商業不動産向け融資が焦げ付くなどして、金融危機の引き金となる可能性がある。
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
大統領選でトランプ前大統領が勝利したことを受け、米金融市場は活況を呈している。株式市場では3指数(NYダウ、S&P500、ナスダック)すべてが最高値を更新した。
トランプ氏が規制緩和を行うとの期待から、代表的な暗号資産(仮想通貨)ビットコインも初めて8万ドルの大台を突破した。
米金融資産が買われている中、米国債だけは例外だ。10年物米国債利回りは11月6日、一時4.48%と7月以来の高水準となった。
トランプ氏が来年1月20日に大統領に再び就任するまでの間に「時限爆弾」が爆発するリスクがあるからだ。
米国では連邦債務の上限が1917年以来法律で定められているが、昨年1月に現行の限度額(31.4兆ドル)に達している。これにより、米国債は史上初のデフォルト(債務不履行)に陥りかけたが、昨年6月に「財政責任法」が成立したことでこれまでのところ、国債の発行に制約は生じていない。だが、この法律が失効する来年1月2日までに新たな合意が成立しなければ、デフォルトリスクが再燃することになる。
11月の選挙で共和党が上下院ともに多数派となる公算から、債務上限に関する新たな合意が成立する可能性が高まっている。それでも市場関係者は米国債への警戒を緩めておらず、長期金利に対する上昇圧力は高いままだ。
連邦議会の合意により米国債のデフォルトが回避できたとしても、長期金利の上昇圧力が和らぐことはないと言わざるを得ない。理由の一つが米連邦政府の財政赤字が急拡大していることだ。