トランプ氏の大統領復帰が原油価格の下落に拍車をかける懸念が高まっている。すでに需要が弱いことに加えて、米中対立の激化は中国経済の悪化を招く可能性が高く、米国では石油業界が規制緩和を要求。中東ではイラン・サウジアラビア間の緊張緩和への期待が出てきており、中東リスクが原油価格を下支えする効果が薄らぐ可能性がある。
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り、1バレル=67ドルから70ドルの間で推移している。需要に対する懸念が再び優勢となり、原油価格は先週に比べて3ドルほど下落している。
まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。
需要低迷に米中対立激化が追い打ち
石油輸出国機構(OPEC)は11月12日に発表した月報で、世界の今年の原油需要は前年比182万バレル増とし、前月予想の日量193万バレル増から引き下げた。来年の伸び幅も10万バレル下方修正し、日量154万バレルとした。
見通しの引き下げは4カ月連続となる。中国の今年の需要の伸びを日量45万バレルと前月の同58万バレルから引き下げた。その理由として、製造業などの低迷と液化天然ガス(LNG)燃料トラック導入拡大によるディーゼル需要の減少を挙げている。
OPECは世界の原油需要の減速をようやく認識した形だが、国際エネルギー機関(IEA)など他の機関よりも依然として強気だ。
IEAは11月14日「世界の今年の原油需要の伸びは日量92万バレル、来年は日量99万バレルとなる」との予測を示した。
注目を集める中国の10月の原油輸入量は、前年比9%減の日量1053万バレルと6カ月連続で前年割れとなった。前月は日量1107万バレルだった。1~10月ベースの原油輸入量も前年比3.4%減だった。
国有石油大手の中国石油天然ガス(ペトロチャイナ)や国営化学大手の中国中化集団(シノケム)などが製油所を相次いで停止していることが関係している。
11月8日に発表された経済対策に市場が期待する消費刺激策が含まれなかったことから、「中国経済の不振は続く」との悲観論が強まっている。トランプ新政権との間で対立が激化することも確実だ。中国の原油需要は今後も下落するとみて間違いないだろう。