国債市場はプロの市場という意識を持つ個人も少なくない(写真:つのだよしお/アフロ)国債市場はプロの市場という意識を持つ個人も少なくない(写真:つのだよしお/アフロ)

 異次元緩和、MMT、プライマリーバランスなど、さまざまなテーマで語られることの多い国債。「国が発行する債券」と言われても今一つイメージが湧かないが、国債とはいったい何なのか。『はじめての日本国債』(集英社新書)を上梓した経済学者で東京大学公共政策大学院特任准教授の服部孝洋氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──なぜ国債をテーマに本を書かれたのでしょうか?

服部孝洋氏(以下、服部):普段、接することが少ない国債は、一般の方々にはなかなかイメージしづらいものかもしれません。また、市場参加者の中でも国債はマニアな世界だとされています。

 ただ、国債は政府の歳出を背後で支えているという意味で我々の生活に密接していますし、何より金融商品という観点でみれば、国債が基本的には一番安全な金融商品です。

 私たちにとって一番身近な金融商品は預金ともいえますが、国債は預金より安全性が高い金融商品です。銀行には預金保険による保証がありますが、金額に上限がありますし、日本政府の破綻に比べれば、邦銀の方が破綻する可能性が高いことは事実でしょう。

 すべての金融商品は国債の金利をベースに評価がなされます。

 新聞などで地方債について目をしたことがあるかもしれません。地方債は、たとえば東京都が借り入れをするために発行する債券です。もちろん、日本政府と比較したら、東京都のほうが信用力は低いと言えますし、国債ほど地方債は活発に売買されていません。

 その意味で、投資家から見て、地方債は国債よりリスクが高いわけですから、国債より金利が高くなければ地方債を買う理由がありません。

 僕らにとって身近な住宅ローンも同じです。銀行の視点に立てば、東京都に貸し出すより、僕らに貸すほうが当然リスクが高い。銀行からすれば、東京都が発行する地方債の金利より私たちに貸し出すときの金利が高くなければ、我々に貸す理由はありません。

 大切な点は、金利はお金を借りたい人と貸したい人が折り合えるように決まるということです。借りる人はもちろん低い金利で借りたいと考えますが、貸し手の立場に立てば、リスクに応じた金利がなければ貸したくありません。

 金融市場がうまく機能していれば、リスクを反映した金利や価格が形成されます。単純にリスクが高いからダメだと考えるのではなく、リスクに見合ったリターンがあるかと考えることが大切です。

──投資において、株と債券はどう異なるのでしょうか?