歌舞伎町ではカネと見た目が徹底した評価基準となっているという(写真:momo.photo/イメージマート)

 アジア最大級の歓楽街・歌舞伎町(東京・新宿区)。それは、男女の愛憎相半ばする複雑な感情と大金が交錯する街だ。歌舞伎町にはどのようなルールがあるのか、なぜ感情のもつれが生じるのか、今後歌舞伎町はどのように変化していくのか──。『歌舞伎町に沼る若者たち 搾取と依存の構造』(PHP新書)を上梓したライターの佐々木チワワ氏に話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター兼ビデオクリエイター)

──ホストに没頭する女性、いわゆる「ホス狂い」という言葉について、書籍中で佐々木さんなりの再定義をしていました。

佐々木チワワ氏(以下、佐々木):歌舞伎町では、ホストに使ったお金が女性の評価に直結します。

 けれども、月100万円稼いでいる人にとっての10万円と月15万円稼いでいる人にとっての10万円は、同じ金額であっても価値が異なります。つまり「高額なお金をホストに投じているから」という理由だけでは、その人が真にホス狂いか否かは判断できません。

 そこで、ホス狂いの定義について改めて考えてみる必要がある、と思いました。

 まず、収入に対して、不釣り合いな高額な出費をホストにしていること(金銭)。次に、日常生活や友人関係、仕事よりもホストを優先していること(生活)。

 そして、ホストクラブに通うために仕事を変えること。これは、多くの場合は手っ取り早く高収入が得られる風俗やパパ活などの「夜の仕事」に流れるケースがほとんどです。

 最終的に、ホストのために「どこまで過酷な労働に身を投じることができるか」で己の献身度を評価するようになる場合もあります(自己犠牲)。

 最後は、ホストとの関係性や、ホストからの承認がなければ精神的に満たされなくなる状態です(精神的依存)。

 この4つを満たす場合、すなわち「ホストに対する金銭的、生活的、精神的依存が本人の生活と自己認識の中心に位置し、自己犠牲を伴ってでもホストクラブに通う状態」こそが「ホス狂いである」と私は再定義しました。

──今回書籍を読んで、歌舞伎町では、女性は「いくらホストにお金を使ったのか」、ホストは「いくらお金を使ってもらったのか」が評価基準になっている、という印象を受けました。

佐々木:公式ルールはそうですが、あくまでもそれが「表面上」であることが難しい点です。