受験戦争を勝ち抜いた女性がホストにはまる理由
佐々木:受験勉強では、点数や偏差値という明確な数字が基準となっています。ホストの世界の評価基準に似ていると思いませんか。
受験勉強で、1点でも点数を上げるのが楽しい、全国順位で上位になるのが快感だったという女性も、「使った金額」が評価基準であるホストクラブのシステムに馴染みやすい傾向があると思います。
さらに、受験勉強は自分との戦いです。睡眠時間を削る、友達と遊ぶのを我慢して勉学に励む。そうすれば、ある程度のリターンは期待できます。そういった女性は、夜の仕事に流れ着いたときに、「今月、こうやってうまく仕事のシフトを組めば、あと1万円多く稼げる」というように、自分との戦いを楽しむことができます。
また、お金をたくさん稼げるか否かは、夜の世界では容姿と直結します。
「かわいい」「美人」という評価は、個々人の美意識という非常に曖昧な基準に基づいています。けれども、「君ならソープで月いくら稼げるよ」という容姿の評価は、明確な数字による評価です。
「私は商品としてこれだけの価値がある」「それだけ容姿が優れている」という数字の評価が、稼ぎというかたちで得られるのが歌舞伎町の世界です。数字による評価が大好きで、勉学に打ち込んできた女性にとっても、歌舞伎町は居心地のいい街なのかもしれません。
──歌舞伎町を中心としたホストクラブの利用客が高額の借金を背負う「売掛問題」が国会で話題に上がり、2023年11月30日に、消費者庁が「ホストクラブなどにおける不当な勧誘と消費者契約の適用について」という規制を出しました。規制が出るほど深刻なホストクラブの売掛とは、どのようなシステムなのでしょうか。
佐々木:簡単に言えば、店舗へのツケ払いです。その日に現金を持っていなくても、決められた期日までに返済するのであれば、ホストクラブでツケで飲食ができる、というものです。
他に問題になっているシステムとして、立替金というものもあります。これは、ホスト個人への借金です。売掛金が期日までに返済されなかった場合、ホスト個人がその金額をお店に補填します。ここで、借金の形態が「利用客とお店」から「女性とホスト個人」という形態に切り替わります。