「金利リスク」とは何のことか?

──国債のリスクは何でしょうか?

服部:前述のとおり、国債には年限があり、国債の価格は年限の長いものほど大きく変動しやすいという特徴を持っています。これを「金利リスク」と言います。国債の場合、社債のようにデフォルトの可能性というより、金利リスクがもっぱら議論の対象になります。

 この本では、携帯電話の契約を例に出して説明しました。本質的に、長期の固定契約は将来の収入や支出を確定させることですから、経済環境が変わると、その契約期間に応じて損益が大きくなります。

 国債には、2年国債(2年後に返済を迎える国債)といった年限の短い国債がある一方で、30年国債など年限が長い国債も発行されています。30年国債を購入するとは、30年間のリターンを固定することを意味します。

 ただ、これはあくまで最後まで国債を持ち切ることが前提の話で、国債には転売市場がありますから、途中で売買もできます。

 国債の発行後、金利(価格)は変動しますが、30年国債の価格は2年国債などに比べて、大きく動きます。例えば、金利が大きく上がる局面があると、価格が大幅に低下することになります。

 最近では、一部の自治体が30年債などを保有していて、大幅に評価損(仮に売却したら損失が出る状況)を計上したというニュースもありました。

──その説明を聞くと、将来どうなるか分からないから、年限の長いものには手を出さないほうがいいというようにも聞こえます。

服部:日本では金利が低く推移しており、投資家がそれに慣れていたため、金利の急騰など金利リスクに真剣に向き合わなかった可能性はあります。

 実際、30年国債などの金利が長い間低く推移していたのは、将来金利が上がらないという予測が反映されていたからとも言える。結果的に、日銀は利上げに踏み切り、30年国債などの金利も上がることで、評価損を被った投資家が出ました。

 どのくらいのリスクを取っていいかについては、自分の運用している資金の性質を理解することが重要です。

 例えば、自治体であれば、30年国債などで運用し、途中の金利上昇で保有する国債に評価損が出ても、最後まで持ちきるという選択肢もあります。その一方で、自治体の中には地震などの備えのために基金を積んでいるケースもあります。地震など急な支出のために基金を持っているならば、満期まで持ち切るという議論はできないはずです。