なぜ金融の勉強が大切なのか?

服部:国債は金融機関からみればビジネスである現実も、この本では丁寧に書きました。

 例えば、国債の売買市場を作る証券会社は国債を安く仕入れて、投資家に高く売ることでビジネスをしています。これはコンビニやスーパーが安く商品を仕入れ、利益をのせて販売することでビジネスをしていることと大きな構図は同じです。

 国債の投資家も、リスクに対して相応のリターンがあると考えているからこそ、国債を買っています。国債の議論がなされる場合、こうした投資家や証券会社などのインセンティブが見逃されがちですが、この点について具体的に踏み込んで書いた点もこの本の大きな特徴です。

──金融の勉強は重要ですか?

服部:保険や住宅ローンなど大きな支出を伴う場面で金融の知識が必須です。その観点で言えば、勉強する価値は高いと思います。

 例えば、誰にとっても生命保険に入ることは大きな買い物です。ところが、家電などを買う場合はネットなどで細かく価格を比較するのに、生保に入る場合は他社と条件を比較せず、驚くくらい早く決めてしまいます。

 住宅ローンにしても、人生で一番大きな買い物になるかもしれない家の購入と密接な関係がありますから、それ相応の時間をかけて勉強すべきだと思います。

 最近では、NISAなど株式投資も身近になってきましたが、株式投資も同様です。株式投資の場合、元本割れする可能性もあるわけですから、投資をする前に損失の可能性に真剣に向き合うべきです。実際に、損した時にどのくらい納得感があるかは、その投資をするうえでどれくらい主体的に勉強したかに依存すると思っています。

金利のある世界に戻りつつある今、金融の知識は必須と言える(写真:Nobuyuki_Yoshikawa/イメージマート)金利のある世界に戻りつつある今、金融の知識は必須と言える(写真:Nobuyuki_Yoshikawa/イメージマート)

服部孝洋 (はっとり・たかひろ)
経済学者、東京大学公共政策大学院特任准教授
2008年野村證券入社、2016年財務省財務総合政策研究所を経て現職。著書に『日本国債入門』(金融財政事情研究会)、共著に『国際金融』(日本評論社)。SNSやホームページでも、一般の読者に向けての情報発信を積極的に行なっている。

長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。