日本は人口減、成長には企業の積極的な設備投資が必須

 日本経済の現状評価において、「回復」という言葉がなおよく使われているが、そこには勘違いが入り込んではいないだろうか。むしろ、すでに現在の成長は実力通りとなっており、このままでより高い成長が実現するとは思われない。

 日本経済の成長率がより高まるためには、企業の設備投資が恒常的に活性化しなくてはならない。足元でこそ、その伸びは高まっているが、積極的な設備投資が継続しないと成長率は高まらない。潜在成長率の推計において、1980年代後半のバブル生成期以前と比べ、それを大きく引き下げているのは資本投入、すなわち企業の設備投資の寄与だ。

 一方、個人消費には人口動態の影響がはっきり出ていると考えるべきだろう。人口が減少し、代表的な家計が高齢化する下で、かつてのような個人消費の伸びが回復するのを当然視するのは誤りではないか。

 そうした状況で、成長率が高まらないからと言って、財源措置のない需要刺激を財政で行うことは、将来の大きなしっぺ返しの元にしかならない。企業のリスク・テイクをいかに活性化させ、それを持続させるかこそが大事だ。

 トランプ2の下で、それをどう実現するか。これからのマクロ経済運営上の重要なポイントになる。米中経済の分断化の中で、経済安全保障にも気を付けながら、日本企業がどう次の成長を設計するか。難しい問題ではあるが、企業経営が容易でないのは昔から変わらない。

 試行錯誤の過程にはなるだろうが、組織的にも、社会的にもそれを許容しつつ、トランプ2で高まる不確実性の波を乗り越えていくほかない。

 新しい政権は、前回よりも準備万端で発足すると言われている。政権の枢要人事もすでに次々と発表されている。

 選挙戦において繰り返されたスローガン政策は、具体的な内容には手直しも入るだろうが、矢継ぎ早に打ち出されるとみられる。経済分野では、関税引き上げ、移民制限、環境対応からの撤退などが大きな影響を持つだろう。