- IMFの外貨準備の構成通貨データ(COFER)を見ると、過去25年弱でドル比率は約71%から約59%に約12%ポイントも低下している。
- その受け皿となっている通貨の一つは人民元。ここ最近、純輸出の決済通貨として人民元の比率が増しているロシアは、それを象徴している。
- ドル一極集中の国際通貨体制がすぐに変わるわけではないが、「脱ドル」と「人民元化」は着実に進んでいくと見られる。
(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)
再び過去最低を更新したドル比率
6月30日にはIMF(国際通貨基金)から外貨準備の構成通貨データ(COFER)が公表されている。外貨準備とは、各国の中央銀行が保有するすぐに利用可能な対外資産のこと。COFERは、その外貨準備について、通貨ごとの割合を示したデータである。
これは、為替市場を中長期的に展望するにあたって重要なデータであるため、定期的にチェックする価値がある。
世界の外貨準備は、2023年3月末で前期比1253億ドル増の12兆396億ドルと2期連続で増加した。今年1~3月期の期末と期初を比較すると、米10年金利は3.9%程度から3.5%程度にやや低下しているもののほとんど横ばいで、為替相場では名目実効ドル相場(NEER)が1.4%下落した。
3月中下旬で金融不安が一時的に高まったが、1~3月期を通せば金利・為替の動きは穏当であったと言える。
こうした中、今回のCOFERデータの動きは、ドル比率上昇とユーロ比率低下に集約された印象が強い。
ドル比率は前回記録した統計開始以来最低の水準(58.58%)から+0.43%ポイント上昇の59.02%と2期ぶりに上昇している(図表①)。もっとも、前回が前期比▲1.52%ポイントと四半期としては過去4番目の低下幅を記録した経緯も踏まえれば、自然な動きと言える。
【図表①】
2022年7~9月期から2022年10~12月期にかけてドル比率が低下したのはドル全面高を受けて世界中で通貨防衛(ドル売り・自国通貨買い)の動きが活発化したためであった。