
(柳原 三佳・ノンフィクション作家)
2027年NHK大河ドラマの主人公は、幕末の幕臣・小栗上野介忠順(おぐりこうずけのすけただまさ)に決定しました。主演は俳優の松坂桃季さん、タイトルは、『逆賊の幕臣』です。
【外部リンク】2027年 大河ドラマ「逆賊の幕臣」主人公・小栗忠順役は松坂桃李さん!(NHK)
実は、本連載でも小栗忠順をたびたび取り上げてきましたが、「開成をつくった男 佐野鼎(さのかなえ)」と小栗とは、幕末に希少な接点がありました。
1860年、幕府は日米修好通商条約の批准書を交わすため、初めてアメリカへ使節を派遣しました。小栗はこのとき、「万延元年遣米使節」と呼ばれる77名の使節団のナンバー3(監察)として、江戸まで迎えに来た米軍艦で太平洋を渡ったのですが、佐野鼎も従者の一人として随行しており、約9か月間にわたる地球一周の行程を共にしていたのです。
当時、小栗33歳、佐野は31歳。身分に隔たりはありましたが、小栗は、西洋砲術や航海術の専門家だった佐野に一目置いていたようで、直接質問をしたりすることもあったようです。また、佐野が書き記した訪米日記や手紙にも、小栗に対する尊敬や憧憬の念を感じさせる記述が見られ、同年代だった二人が交流していたことをうかがわせます。
NHKは上記サイトの中で、「幕府を倒した側ではなく、幕臣の側から幕末史を描きます」としています。明治の世を見ることなく無残な死を遂げ、歴史に埋もれた有能な幕臣・小栗忠順とこの激動期が、1年を通してどのように描かれるのか、今から楽しみです。
小栗上野介の「徳川埋蔵金」伝説、その真偽とは?
さて、小栗忠順とはいったいどんな人物だったのか、皆さんはご存じでしょうか。
今回、NHK大河のニュースが飛び込んできたので、周囲の人たちに幾度となくこの話題を投げかけてみたのですが、歴史の教科書でほとんど取り上げられてこなかったせいか、小栗の功績を知る人は少なく、名前を知っていたとしても、そのリアクションの多くは、「あ~、小栗コウズケノスケっていえば、あの徳川埋蔵金の人でしょう?」というもの……。しかし、「一般社団法人 万延元年遣米使節子孫の会」の理事でもある堀早百合さんは、このうわさをきっぱりと否定します。
「徳川埋蔵金? ありえないですね。当時、幕府の財政は火の車でした。勘定奉行だった小栗は、その財政難にもっとも苦しめられていた当事者ですので、仮に埋蔵金にするようなお金があったなら、とっくに使っているはずです」