平和記念公園に集まったG7各国首脳(5月19日、写真:ロイター/アフロ)

1 はじめに

 被爆地広島においてG7首脳会議が行われ、核軍縮に関するG7首脳広島ビジョンが発出された。

 このビジョンには、「我々の安全保障政策は、核兵器は、それが存在する限りにおいて、防衛目的のために役割を果たし、侵略を抑止し、並びに戦争及び威圧を防止すべきとの理解に基づいている」と記されている。

 このことをもって、この会議では核抑止が肯定され核軍縮が蔑ろにされたと批判的に捉える論評も見られる。

 しかし核軍縮核抑止も、その目的は、戦争において核兵器が使用されたり、威嚇の手段として用いられたりしないようにすることであるのは明らかである。

 それにもかかわらず、この両者が両立しない対立的なものとして論じられるのは、(核に限らず)軍事力による抑止の重要性を説く側にも、これに反発する側にも、抑止に関する十分な認識が不足しているからではないかと思われる。

 特に、抑止が国家安全保障に不可欠だと説く側は、抑止のために十分な量の兵器が必要だという側面だけを強調することが多く、これが誤解を生む原因にもなっている。

 戦争が発生することを未然に防止できるよう抑止力を強化するということは、単に軍事力を増強することと同意義ではない。

 抑止を効果的に働かせるためには、相対的な軍事力の比較だけではなく、そのための条件を整備していくことが不可欠である。

 それは軍縮という考え方と対立するものではなく、むしろ互いに補完し合うものである。

 なぜそう言えるのか。以下その考え方について説明してみたい。