平和記念講演を訪問したウクライナ・ゼレンスキー大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(山中 俊之:著述家/国際公共政策博士)

主演:ゼレンスキー大統領、出演:各国首脳、演出:岸田文雄

 岸田首相は、政治家であると同時に、稀代の演出家かもしれない。歴史に残る劇場型G7広島サミット(主要7カ国首脳会議)を終えての率直な感想だ。

 1975年にフランスのランブイエで第1回が開催された主要国の首脳によるサミット。今回の広島サミットで49回目を迎える(緊急時開催を除く)。

 サミットに向けては、シェルパと言われる外交当局責任者(日本では経済担当の外務審議官)が事前に会談や共同声明の内容を精緻に詰める。そのためサプライズが多いわけではない。いや、外交当局からすれば、サプライズがあると困るというのが本音だろう。

 今回は、そのような外交的な慣行を大きく裏切った。もちろん、首相の意向を受けた外交当局が、秘密裡にゼレンスキー大統領の対面での出席を調整していたことは間違いない。しかし、このようなサプライズ演出は、外務省の本来業務からは離れたことだ。

 稀代の劇場型サミットが、岸田首相の演出であることは間違いない。

 主演のゼレンスキー大統領が元俳優であることも、劇場型サミットの演出に大きく貢献した。

 今回のG7広島サミットでは、天(=世界の動き)、地(=広島という場所)、人(=ゼレンスキー大統領)が味方した。

【関連記事】
欧米でも中国でもないもう一つの軸「グローバルサウス」とどう向き合うべきか