戦時経済に移行しつつあるロシア(写真:ロイター/アフロ)

(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 ロシア連邦統計局が5月17日に発表したロシアの2023年1〜3月期の実質GDP(国内総生産)は、速報値で前年比1.9%減という結果だった。2022年4〜6月期以降、ロシアの実質GDPは4四半期連続で前年割れとなっているが、マイナス幅そのものは3四半期連続で縮小しており、経済は最悪期を脱している(図表1)。

【図表1 ロシアの実質GDP】

(出所)ロシア連邦統計局

 速報段階で公表されるデータは、主要産業別の付加価値の動きにとどまっている。

 1〜3月期も不調が続いた産業としては、まず卸売り(前年比10.8%減)と小売り(同7.3%減)が挙げられる。さらに、貨物も前年比2.1%減と悪化が続いた。反面、製造業が同1.1%増と前年増に転じ、建設(同8.8%増)や旅客(同15.7%増)が回復した。

 ロシアがウクライナに軍事侵攻を仕掛けたのは2022年2月24日のことだった。その後、矢継ぎ早に欧米日が経済・金融制裁を強化し、ロシア経済は圧迫された。そのため、同年4〜6月期の実質GDPは前年比4.5%減と腰折れした。ただ、実質GDP成長率のマイナス幅が徐々に縮小しているように、その影響は徐々に吸収されてきた。

 この過程で、ロシア経済は欧米日による経済・金融制裁の強化と、ウクライナとの戦争の長期化を受けて、その構造を変化させていったと考えられる。

 具体的に言えば、対外的には貿易の取引先がヨーロッパから中国やインドといった新興国にシフトした。金融面でも、脱ドル化を進めて人民元や金(ゴールド)による決済や保有が増えた。

 そして、戦争の継続を前提に、ロシアは経済運営の統制色を強めてきた。ロシアの企業は政府の命令次第で民生品よりも軍需品の生産を優先せざるを得なくなったし、何より、働き盛りのロシア国民が徴兵される仕組みが整ってきた。

 実質GDP成長率のマイナス幅が徐々に縮小する過程で、ロシアの経済構造は着実に変化したわけだ。

 ロシアの経済統計の信ぴょう性はともかく、GDP統計の需要の構成項目(コンポーネント)の変化を確認しても、この1年間でロシア経済の構造が着実に変化したことがよく理解できる。

 ロシア連邦統計局はまだ2022年10~12月期までしか実質GDPの季節調整値を公表していないが、このデータからも興味深い事実が見て取れる。

【関連記事】
過去最高を記録したロシアの経常黒字だが、国力が復活したわけでは決してない
戦時経済、計画経済の色彩を強めるロシア、戦争から1年で旧ソ連に先祖返り
2つのショックに見舞われるロシア経済、2023年にどこまで持つか?