爆発物処理の教官を務めるニコライ・ニコラエビッチ・ドラバティーは、1万個の地雷を除去したウクライナの“サムライ”だ。「日本が大好きだ。武士道を尊敬している」と語る(筆者撮影)

(国際ジャーナリスト・木村正人)

「地形や地盤によって地雷除去機は使えない、手作業になる」

[ウクライナ中部クリヴィー・リフ発]「日本が大好きだ。どうやって日本刀をつくるのか一度、見てみたい。武士道を尊敬している。将校の掟と相通ずるものがある。私のコードネームは“サムライ”だ。小柄で勇気があるからだ。工兵としてウクライナや旧ユーゴスラビアで1万個以上の地雷を除去した」

 ウクライナ陸軍元大佐で現在、爆発物処理の教官を務めるニコライ・ニコラエビッチ・ドラバティー(62)は淡々と語りだした。

 ニコライはスマートフォンで日本製の地雷除去機の画像を見せながら「日本の除去機は非常に優秀だが、地形や地盤によって機械は使えない。手作業になる」と話した。

「金属成分を含む岩の多い旧ユーゴでは金属探知機は使えなかった。そんな時は目と足と手を頼りに地雷を探り当てなければならない。1度の失敗も許されない。失敗すると吹き飛ばされてしまう」

 日本政府は国際協力機構(JICA)を通じてウクライナ国家非常事態庁の地雷除去専門職員をカンボジア地雷対策センターに招き、最新の日本製地雷探知機を使った研修を実施している。地雷探知機や不発弾を処理するクレーン付きトラックも供与している。

 ニコライは軍人だった祖父に憧れて入隊した。2014年にロシアが武力でクリミアを併合し、東部ドンバス紛争に火をつけていなければ、今頃はのんびり年金生活を送っていたはずだ。

 ロシア軍はウクライナ侵攻で占領していた地域に地雷を敷設し、ユニセフ(国連児童基金)とウクライナ国家非常事態庁は国土の約3割が地雷で汚染される恐れがあると警告している。

 クリヴィー・リフのNGO(非政府組織)が運営する民間施設の一室でニコライはロシア軍が仕掛けるさまざまな地雷について講義していた。筆者が部屋に入ると無表情な兵士にジロリと睨まれた。一つ間違えば命を落とす緊迫した空気。そのあと兵士の一団は模擬地雷が埋まった草地で探知訓練を行った。兵士たちの集中力が削がれるため写真撮影は厳禁だった。