「地雷の除去は戦争が終わってから少なくとも数十年かかる」

 ロシア軍は退却時、民家にもブービートラップを仕掛けていく。

「ロシア軍の残虐行為で民間人が巻き添えになっている。対人地雷だけでなく、民間人のいる場所での使用は戦争犯罪とされる白リン弾も使っている。それが戦争の真実だ」とニコライは吐き捨てた。

 ウクライナ国防省はロシア軍がドネツク州の激戦地バフムートで白リン弾を使用したと非難している。

 ニコライは手作業で地雷を探知して除去するためのナイフと折りたたみ式のツールを見せてくれた。ニューヨーク・タイムズ紙によると、動物の死骸を手掛かりに仕掛け線を発見したり、ロシア軍が脱走兵を殺すことを目的とした電気仕掛けの地雷に引っ掛からないようグラスファイバーの棒で地面を探ったりするという。

 ウクライナでは第二次大戦中の地雷や弾薬がたくさん見つかっている。「クリヴィー・リフ周辺でも毎年、第二次大戦の弾薬が300発破壊された。日本の優れた地雷除去機を含む国際的な援助があっても畑や集落からの地雷の除去は戦争が終わってから少なくとも数十年かかる。しかも100%地雷を除去するのは不可能だ」とニコライはため息をついた。

クリヴィー・リフにある対人地雷と手榴弾の模擬訓練場(筆者撮影)

  ウウクライナは1997年の対人地雷禁止条約(オタワ条約)の締約国であり、対人地雷の使用を禁止している。一方、ロシアは米国や中国と同じようにオタワ条約に署名していない。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)によると、非締約国が締約国の領土で対人地雷を使用するのは前代未聞の事態だ。