8種類の対人地雷が使用された

 HRWは「オタワ条約の非締約国のロシアも特定通常兵器使用禁止・制限条約(CCW)の改正第2議定書やジュネーブ条約第1議定書、国際人道法の慣習にある地雷やブービートラップなどの禁止と制限に拘束されている」と指摘する。使用する対人地雷の検知可能性、モニタリングを確保し、地雷敷設地域から民間人を排除する必要がある。

 ロシアは20年、国連総会で「オタワ条約の目標を共有し、地雷のない世界を支持する」とする一方で、対人地雷を「ロシアの国境の安全を確保するための有効な手段である」との立場を示した。しかしウクライナ戦争は自衛でも何でもない一般市民に対する無差別テロだ。オタワ条約の非締約国のロシアといえども無差別テロに対人地雷を使用するのは許されない。

 HRWの調査によると、東部ルハンスク州やドネツク州の親露派勢力は14~15年、対人・対車両地雷、ブービートラップを散発的に使用していた。昨年2月のロシア軍侵攻後、ウクライナでは8種類の対人地雷が使われたという。

 対人地雷のMON-50、MON-100は手で仕掛けられ、ブービートラップとしても使用される。ロシア軍が一時、占領していたキーウ近郊のブチャでウクライナの地雷除去作業員がブービートラップにMONシリーズが組み込まれているのを見つけた。指向性地雷で、ワイヤーを引き抜くと爆発する。「致死距離は50メートルだ」とニコライは教えてくれた。

 OZM-72は被害者が引っ掛かると爆発するほか、手動で起爆できる。22年以前からドンバスで目撃、回収されたとの報告が頻繁にあった。昨年5月、ブチャの畑でロシア軍が仕掛けたとみられるOZM-72により男性2人が死亡した。ウクライナも過去にOZM-72を保有していた。ウクライナに備蓄歴がない高火力のPMN-4の使用も確認されている。

 POM-2はヘリコプター、地上発射ロケット弾で散布できる。北東部ハルキウ州で女性2人がこの地雷により死亡した。POM-2Rは手動でも使える。近づいてくる足音を検知するPOM-3は跳躍方式の破片型対人地雷。昨年3月、特別に設計された多連装ロケット砲でハルキウ市近郊に散布され、ウクライナの爆発物処理班に発見されている。