米大統領選挙の直前の10月、トランプ氏の当選を予測していたかのような動きがグローバルサウス諸国で起きた。BRICSへの「殺到」である。「米国第一」の下、米国の影響力は低下することが見込まれるが、BRICSは第二の経済圏になり得るのか。(山中 俊之:著述家/コラムニスト)
BRICSに「殺到」するグローバルサウス
「もし投票権があれば、私はトランプ氏に投票する」
ある会合で、環境コンサルタントのナイジェリア人女性が話していた。再生可能エネルギー拡大を目指すコンサルタントである。
トランプ氏の気候変動問題への対応、ジェンダーや人種に関する発言などを考慮すると、トランプ氏とは真逆の立場にあるようにも思える彼女の発言に一瞬、戸惑いも覚えた。
しかし、その後話をするうちに合点した。「米国が必要以上にアフリカや中東などに介入してきたことに反発があるのだ」と。
トランプ次期政権では「米国第一」政策が強まり、世界の様々な紛争や課題に対する介入・関与が弱まることが想定される。
この状況に、ほくそ笑んでいる国々がある。新興・途上国によって構成されるグローバルサウスと言われる国々だ。「米国の過剰介入から逃れて自由にやっていこう」という思いで新たな外交政策を練っていることだろう。
グローバルサウスの定義は様々であるが、一般には中露は含めないことが多い。本稿でも、中露を除く新興・途上国をグローバルサウスと定義する。
米大統領選挙の直前の10月、トランプ氏の当選を予測していたかのような動きがグローバルサウス諸国で起きた。BRICSへの「殺到」である。
BRICSとは、ブラジル(B)、ロシア(R)、インド(I)、中国(C)、南アフリカ(S)の頭文字を並べたものだ。
2001年、米投資銀行ゴールドマンサックスが成長が見込まれる国々をBRICsと称したのが始まり。その後、2009年にロシアのエカテリンブルグで4カ国首脳会議が開かれ、その後南アフリカが加わり、現在に至る。